邂逅-月- 3

「それだけでいいのか?」
エドウィンが注文したのはご飯ものと魚料理と温野菜だった。
「はい。…本当は、これでも多いくらいです」
「だからそんなに細いんだなお前」
「!…すみません」
悔しそうに睨みつけてるが…。
上目遣いなところは、可愛いもんだとしか言えないが…黙っておくか。
「あの、別にお酒・・・飲んでも」
「毎日飲むと言う訳でもない。気にするな」
「はい」
「それより、どうだ?配属されてからは」
訓練と雑用しかないんだがな。
しかも、俺を手伝う嵌めになっているから、雑用は人一倍多い。
「先輩方は皆さん強いので、勉強になります」
「お前のはかなり、出来上がってると思うがな?」
「形は、そうかもしれませんけれど…やっぱりいろいろな武器やタイプを相手にするのは違います」
貴族のみで形成されている第一とは違って、第二は混合だ。
貴族らしい正攻法な剣の者も居れば、型に嵌らない者も居る。
実践では後者の方が多いと言えるから、確かに実践向きの訓練とも言える。
「小隊長は、二刀流ですよね」
「ああ。多くはないが珍しくもないだろう」
「でも、武器を選ばず使うのは小隊長ぐらいだとお聞きしました」
「基本的には決まっているがな」
ディアス隊長だな。あの人と居る間に、色々なものを使わされたからな…
「それでも、凄いです。武器は特定してしまう方が多いですし」
「お前のも随分、珍しいと思うぞ?」
「う…」
「なんだ?珍しいと言われるのは嫌か?」
「いえ。やっぱり無理に見えるのかなと…」
表情がころころと変わるな。人当たりはいい、と言っていたのはこういうことか?
「無理ではないが、よくあれを振り回せるな?」
「見た目よりは多分、力があると思います」
「その割りに色は細い、と」
「う…。燃費、いいんです。多分」
顔が赤くなっている。からかいがあるな。
一見、綺麗だから冷たそうなのかという印象もあるんだが…
そんなことはないな。寧ろ感情が顔に出やすいタイプだ。
「そういうことにしておこう。無理して食べることはないが、食べれるときは食べておけよ」
「はい」
料理が丁度運ばれてきた。俺の方は肉がメインだが…
「一口食うか?」
「え?」
「全部は食えないが、食べれない訳ではないだろう?」
「あ、はい」
「皿、よこせ」
「でも、小隊長の分が」
「足りなければ頼むからいい。それと、名前でいい」
「え?」
「肩書きで呼ばれるのは余り好きじゃないんでな」
「で、でも…」
「いいから、呼べ」
「え、えーと…」
「俺の名前を知らないとか、言わないよな?」
「し、知ってます。えと…ヒューイ、小隊長」
「肩書きが付いてるが?」
「ええと、その…」
少し眉をひそめて、困っている顔も可愛いものだな
「直ぐにとは言わないでおく」
余り困らせても可哀相かと思って、先送りにしてやる。
ほっとした顔をした。それは、そうか。
「ほら、食べろ」
取り分けた皿を手渡す。
「すみません、ありがとうございます」
礼を言いながら、綺麗な笑顔になる。
子供なのか、大人なのかわからないな。こいつは。
それからも俺は時々、仕事帰りに飯に誘った。
その度に、エドウィンの表情は明るくなっていった。
本来はこうして、感情がはっきり出る子なんだなと判ってきた。
それは勿論、俺だけにではなく小隊の中にもだったが。
共に戦う仲間だ。打ち解けておく方がいい。
だが、もう1つの問題をすっかり忘れていた。
実技も雑務も、期待以上だったし、こうして雑談するときも普通だったからだ。
普通、と言っても確かに時々出る笑顔は人懐っこい以上だったが、俺の方が気にかけなければすむことだったからだ。
2010/10/31

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