その日は、王弟殿下主催の武芸大会だった。 久しぶりに王都に騎士団の名だたる騎士が揃い、俺の同期の連中も王都に揃っていた。 「相変わらず美人だねー。ヒューイ」 「相変わらずお前は目が悪い」 第一騎士団配属の友人は相変わらずだった。 「小隊長おめでとうさん」 「ああ。ありがとう」 「でも、何で第二なのさ?」 「今からでも第一来いよ」 「いや、性に合ってるからいい」 俺は長子ではないから関係はないが、家自体は爵位を持つ家柄だ。 故に、幼馴染や同期の仲のいい者は貴族階級が多いのだが… 「そういえば、今年の新米一の美人さんお前のとこなんだって?」 「え。あの金髪の子だろ?いいなー」 「知ってるのか?」 「うん。僕は今年、訓練生の指南役したからね」 「いいなって、そんなに腕が立つのか?」 「ああ。実務も庶務もどちらも出来る」 「んー、そっちもだけどさ」 「何?」 「アレだけ色気のある子だから、食べちゃった?」 「…は?」 「マジかよ?ヒューイ」 「食ってない」 何を言わせるんだこいつらは…。 「えー。勿体無い」 「色気があるって、何歳なんだよ?」 「んー。確か15だったかな。綺麗な子でね、凄く色っぽいっていうか艶っぽい笑顔なんだよね」 「男だろ?」 「おい、お前達…」 「あの子に関しては関係ないかなーって思っちゃったんだよね」 「嘘だろ。お前が?」 「ああ、判るかも。人懐っこい子だったな」 「ちょっと泣かせてみたいなーって思ったんだよねー」 「ぶっ」 「ちょ、汚いよ」 「お前の口からそんなことを聞くとは…」 お前達…貴族のご子息様とは思えない会話する気か…。 「えー、だって凄くギャップのある子だよね?ヒューイ」 「何で俺に聞く」 「上司でしょ」 「人懐っこいのは認めるが。普通だぞ」 「「嘘」だろ?」 なんだよ、その反論は… 「え、あの子笑ったの見たことない?そんなはずないよね?」 「ディアス隊長は事情わかった上で入れたって言ってたぞ」 「…。確かに見てるけどな」 「それでなんとも思わない訳?」 「無意識なんだから仕方ないだろう。こっちが判ってればすむことだ」 「それさ、お前はいいけど他の奴は大丈夫なのか?」 「2ヶ月になるが、至って普通だが…」 「んー。限界超えそうな気がする」 何の限界だ…。 「あれ?お前のとこの奴じゃないか?ヒューイ」 指された先に居たのは、確かに俺の小隊の奴だった。 そして、問題が起きたことを告げられた。 「悪い。先に」 「問題?」 「…お前達の言ったとおりだよ」 「え?」 「エドウィンが連れて行かれたらしい」 「「「えーっ」」」 「じゃあな」 「大丈夫?」 「誰に言っている?」 友人達を置いて、俺は教えられた場所へ向けて走り出す。 全く。面倒をかけやがる。 子供が自分を誘ってると思う方が間違ってるだろう。 …あいつが、自覚のないのも問題ではあるか。 いや、自覚がないのを知っていて…放置しておいた俺も悪い。 最近は素直に感情を出すようになっていたからな。 俺以外にも、あいつのあの笑顔を向けられた奴がいるはずだ。 嬉しくはないが。 … …ん? 俺は今、なんて思った? あいつの、あの顔を… 俺以外に見た奴が居るのを嬉しくない、と思った…よな。 いつ出るか判らんあの笑顔だ。普通に誰と話していてでても可笑しくない。 だから、だれが見ていてもおかしいことはない。 …そうなんだが。 あれが危険なのだから、どうにかしてやらないといけないんだよな。 俺に見せるなら構わない。無意識なのは判ってる。 誤解するような奴に見せないようにしてやればいい。 俺になら、見せてもいい。どんな顔でも。 考えれば考えるほど、どうもおかしい方向になる気がする。 まずはあいつを助けよう。 2010/10/31
|