邂逅-月- 7

その後は、平穏な日が続いている。
エドウィンは今の所、第四小隊以外のところでは感情を抑えているようだ。
俺の前では、いつもと変わりない。
剣舞のような剣捌きは変わりなく、一層磨きがかかっている。
庶務を手伝ってくれるのも一生懸命だ。
楽しければ笑い、からかえば慌てて焦って、困った顔をする。
「すまないな。雑務をいつも手伝わせて」
帰り道、夕飯を一緒に食べることも当たり前のようになった。
「私は好きで手伝ってますから、気にしないでください」
「雑務の方が好きか?」
「う…いえ、そういう訳じゃ…ないです」
「じゃあどうしてだ?」
「…知りません」
拗ねたか。
「正直な所、助かってるけどな?」
本当に、可愛い奴だな。馬鹿正直に答えなきゃいいのに。
こいつといると、自然に笑えているなと自分でも思う。
ん?また顔を赤くしてるな。
「小隊長は、ホントにずるいです」
「何がだ?」
「なんでもないです…」
言って、野菜をどんどん口に運ぶ。
何をそんなにムキになって…。
「ほら、水」
「す、みませ…ん。ケホッ」
「一気に入れるからだ」
「はい…」
本当に、喜怒哀楽が激しい。いや怒ったのは見たことがないが
「では、またな」
「はい。おやすみなさい」
いつまでこうしていられるものだか判らないが、何もないのは悪いことじゃない。


「いい感じだねー。ヒューイ」
「お前が笑ってるなんて、あの子凄いなあ」
「お前ら…いつから」
エドウィンと別れて振り返ったら。悪友共がそこにいた。
「俺達も飯食いに行っただけだったんだけど」
「なーんか声かけずらくてさー」
「なー?」
「そうか?別に普通だと思うが」
あの店にいたのか。気づかなかったな…。
「…普通?」
「いや、有り得ない。お前ずっと笑顔だったし!」
「は?」
「自覚なし?」
「益々すごいなあ、あの子」
「ホントに食ってないの?」
「何の話だ?」
相手は男だぞ…。しかも自分の部下だ…。
「お前、上司だろうが嫌な奴とは笑いながら食事なんてできないじゃん」
「…」
それは、その通りだ。
「俺達と一緒の時だって、あんなに始終笑ってないぞ?」
「そうそう」
そんなに笑ってたのか?俺は
「もしかしてさ、自覚なし?」
「何のだ?」
「「「「……」」」」
何だ?その沈黙は
「信じらんない」
「ここまで疎いとは俺も思わなかった」
「そういえば浮いた話1つなかったよな…ヒューイだけは」
「まあほら、相手男だし、仕方ないんじゃ」
「でも目の前でディアス大隊長見てるんだよー」
「何の話だ?訳のわからないことを」
「だから」
「お前がエドを気に入ってるって話」
「それはまあ、そうだが」
「…」
「……」
「わかってないよねえ」
「だから、何がだ?」
大きく溜息をついてしまったのは、仕方ないと思う。
「あの子のこと、好きでしょ?」
「好き嫌いで言えば好きだが」
「だーかーらー」
「お前さ、あの子のアレ他の奴に見せたくないとか思ってない?」
「それは当たり前だろう。危険だからな」
「自分ならいい?」
「無意識なのは判っているからな。問題はないだろう」
「でも今は自分で判ってるからあの子も自分でなんとか回避できるんじゃない?」
「無意識だって言ったろう。誰に見せてるかわからないんだぞ」
「で、近くに置いておくんだ?」
「俺が付いてると噂にしたのはお前らだろ?」
「そうだよ」
「でさ、ヒューイ。それ別に嫌じゃないよな?」
「……まあ、仕方が無いしな」
「仕方がない、だけ?」
「……」
言いたいことが、漸く判った。
「どう?」
「…降参」
「判った?」
「そう、かもしれないな」
「かもじゃないだろ」
「好きなら好きで、いいじゃない?」
「あの子だって、ヒューイのこと嫌いじゃないだろ?」
好き勝手言ってくれるな。
「それとこれとは、別だ」
「別じゃないよ。自分のことわかってないよねヒューイも」
「自分のこと、か?」
「天然たらしだからなー」
「なんだそれは」
「……本気で言ってる?ヒューイ」
「何のことだか判らないが」
俺の言葉に皆ががっくりと肩を落とした。
「まあ、それはいいや。でも自分の気持ちは整理ついたろ?」
「ああ。そうだな」
「じゃあ、どうする?」
言わせたい訳だな。お前ら…。
「手に入れるよ」
「「「「がんばれ」」」」
有り難いのか判らない声援をありがとう。
相変わらず騒々しいし、はた迷惑だが…大事な友人達だ。
2010/11/2

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