邂逅-月- 8

自覚したからと言って、急に変わる訳じゃない。
それは俺の気持ちだけのことだ。
嫌われてはいないだろう。だがそれ以上だと、どうだろうな。
「あの、何か…?」
じっと見ていたようだ。
「いや、お前を見ていただけだ」
「え?あ、はあ…その、どうして?」
「さあ、どうしてだろうな」
本当に、どうかしてるのかもしれないが。自覚してしまえば、こんなものか。
「エドウィン?」
「あ、な、何でもないです」
俺から視線を逸らして、書類に目を落とした。
何だ?
「どうかしたのか?エドウィン」
「な、何でもないですって」
「そうか?ホントに」
じっと見ていると、ちらっと俺の方を見る。
そしてまた逸らす。
小動物みたいで可愛いな…やっぱり。
「それの処理が終わったら帰るぞ。夕飯、付き合え」
「!はい」
ぱっと顔を上げて嬉しそうに答える。
やっぱり可愛い。
男相手にそう思うのも変だとは思うが…仕方がない。
俺も早くこれを終わらせるか。


「ホントに、手馴れてますよね…小隊長」
「野営もあるから自然とな?」
俺が包丁を使えるのは意外らしい。
外で食べるのも嫌いではないが、時間を気にする必要がなくなるのと、
俺が飲まないのをエドウィンが気にするので…最近はよく俺の家で食べることが増えた。
あいつらに後で冷やかされる心配もないのも、理由の1つではある。
「皿、出してくれ」
「はい」
大した料理が出きる訳ではないが、好き嫌いもないようなので問題はない。
ただ、エドウィンの食の方は、かなり細いと思う。
野菜類だけは大目に食べれるようだが。
自分の食べられる量を解かっていて、その分だけを綺麗に食べる。
きちんと躾けられた、というのが分かる。
「小隊長?」
「…それだ」
「はい?」
今でも呼び方を変えていない。
「名前で呼べと、前にも言ったと思うが?」
「む、無理です」
「どうして」
「だって、小隊長は小隊長で、私にとっては上官ですし」
「それは変えられないが、これだけ一緒にいるのに。打ち解けてくれないのは寂しいぞ?」
「!そ、そんな訳じゃ、ないです」
大げさに、溜息をついてみると、慌てたようにエドウィンが答える。
「じゃあ、名前を呼んでくれ」
我ながら意地悪なことを言っているんだろうとは自覚している。
「で、でも」
「2人でいる時なら構わないだろう?誰も怒る奴がいない」
「…本気、ですか…?」
「ああ」
「…え、と…ヒュー…イ
「ん。それでいい」
軽く頭を撫でてやると、途端に顔が真っ赤になる。
「何故照れる?」
「な、慣れない、から」
「慣れないことをすると、照れるか?」
「この場合は、そう、です」
所在なさげに視線を違う方に逸らして答える。
「じゃあ、もっと慣れない事を…してみるか?」
「?」
俺が何をするか、判らないという顔をしている。
頭を撫でていた手で頭を引き寄せる。
「小隊、長?」
また名前じゃないそれを声にした口を塞ぐ。
「んっ」
「名前を呼べと言ったろう」
俺は、間近で見開かれた瞳に笑いかけて言う。
答えを聞かずに、直ぐにまた口付ける。
「んんっ」
強引に、歯牙を割る。
逃げる舌を絡ませて、舐めて。
青碧の瞳が潤んで、半ば閉じられる。
一度、口付けから解放する。テーブル越しは、不安定だ。
放心したように、ゆっくり瞳を開いて俺を見る。
「…ど、して…」
「逃がさない、ため…かな」
階級なんかで、呼ばれたくない。
頑なにそう呼ぶなら、壊すしかない。
俺は、エドウィンを抱き上げた。
「!?」
「おしおき」
「え?な、なんの?」
「黙って」
「小隊…」
最後まで言わせないうちに口付ける。
「階級は禁止だ」
「は…ぁ」


何も言わせないように、抱き上げたままで口付けを繰り返して部屋を移動する。
寝室のベットに、エドウィンをゆっくりと降ろす。
「あの、えと…小、じゃなくてヒ、ヒューイ、酔って、ます?」
「ワイン1杯で酔うわけないだろう。素面だ。心配するな」
「じゃ、どうして」
「…お前が好きだから、じゃ理由にならないか?」
金の髪を撫でながら、覆いかぶさるように倒れこむ。
「…本当、に…?」
見上げてくる瞳。
子供ではない、俺を誘う、艶めいた瞳。
無意識ではなく、問いかけて濡れた青。
「好きでもない相手に、キスはしない」
気持ちは、通じているのだと思っていいのか?
額に、頬に、そして唇に、キスを落としていく。
「ヒューイ、好き…です」
小さな声で、俺を打ち抜く。
「俺もだ、エディ」
2010/11/2

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