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はじまりの季節

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「君達に来てもらったのはお願いがあってのことなんだけれどね」
新設の凰山学園高等部へ入学を決め、入寮開始日と決められたその日
私と友人(親友で悪友だが)は舎監室へ呼ばれた
「お願い・・・・ですか?」
怪訝そうな顔で少々猫っ毛の頭を傾げ、大きい目でじっと舎監を見つめて友人が尋ねる
(ぱっと見は人当たりのイイ、可愛い男の子って感じをしっかり演出してるし)
そんな友人・矢萩琳(やはぎ・りん)を見ながら私は密かにそんな事を考えていた

「そう。えーと理事長の方から指示もあったことなんだけど、アーネストくんが入試トップで矢萩くんが2位だったんだよ」
人のよさげな笑顔を浮かべて舎監の先生(牧先生という担当教科は化学だそうだ)が言う
「え?そうだったんですか?知らなかった〜」
白々しい・・・
とあるルートからその情報は入手済みなことだったのだが、知っているハズはないのだから反応としては変ではないが 「知っている」ことを知る私にとっては十分芝居じみた下手な反応に見える
「アーネストくんは自信、あったの?」
いきなり振られるのか
「ええ、そうですね。トップは意外でしたけれど、かなり出来たなとは思っていましたから」
にっこりと営業用
別にどうでもいいのだけれど。入試成績が学校生活に影響与えるわけでもないだろうし
・・・早く本題に入って欲しい
だらだらと話を続けるよりは、天気がいいから外へ出掛けたいモンだ
考えていることは全部営業用の後に隠して私は促すことにした
「それで、理事長からの指示というのは・・?」
「ああ、ごめんね。えーと、前期の間だけでいいのだけれど君達2人に生徒会の総代と副会長をやってもらいたいと思って」
「え?生徒会・・ですか?」
琳がおもしろそうかも。というのがありありの声で復唱した
私は面倒だと思うぞ、そんなのは
「みんなお互いを知らない訳だから、入試席次というのは目安だと思うし、幸い君達は知り合いだというから知らない同士に頼むよりも 確実だからね。・・・駄目かな?」
「どうする?アーネスト」
やってみない?という顔をしているくせに聞くか?お前は
「主導権を握って振りまわすのは私の領分ではないからな。琳が総代をやるなら付き合ってもイイけど?」
そういう組織自体は嫌いじゃないし、ゼロから企画するのは面白そうではある
面倒には違いないケド、琳と一緒なら退屈はしないだろう
だから私はそう答えた
「うーーん。補佐、してくれる?アーネスト」
「期待はしないでくれると嬉しいけれど?」
そんな受け答えをしながらも、私達は先生のお願いを承諾することにした

「2人じゃ大変だと思うから、仕事できそうな人を何人か勧誘してくれていいから」
と、学習室のキーと受け取り、パソコンの使用許可を貰った
学生のデータを見て、入学式までに絞りこんでみるといいよと言われた
どうせ決めるなら絞りこみまでしてくれてもいいと思うのだけれど・・

私達は舎監室を出、自室へ戻ることにした
「どーする?これからデータ見る?」
「今日は止めておくよ。天気がいいから回りふらっとしてくる」
「じゃ、明日午後にでも行ってみようね〜」
昼に食堂で待ち合わせを決めて、私達は別れた

「かったるいし・・・昼寝スポットでも探してみようかな」
歩きながら窓の外を見て、私は外へ出ることにした
郊外なせいか、空が高い気がするし、天気がいいので今日は暖かそうだ
学校が始まってから時間を潰したい時にイイ場所や、夜に羽を伸ばしたい時に抜け出す経路を探しておくのもいいしな
寮を出て、学校への道とは反対側。綺麗に整備された花壇のある広場(それほど広くはないが)を抜けて裏の林へと入る


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