凰山学園高等部では、数少ない自宅通学者(何人かはアパート借りてる 奴もいるらしいけど)を除いて、青竜・朱雀・白虎・玄武の4つの寮で生徒は
寮生活を送っている。
この9月から俺は白虎寮の寮長をすることになった。
仕事自体はそんなに大変なことはない。
でも、この人事以来、俺は大変な目に合っている・・・・。
「由也、朝だよ。起きなさい」
「んーーー?加納・・・もぉ少し・・・」
「由也?加納はもう起きて、洗面所へ行ったよ」
「・・え・・・?」
ぼんやりと目を開けると目の前にド金髪とエメラルドの瞳。
「え・・!?そ・・総代っ!?」
寮長就任初日の朝のこと―――
「由也?」
黙ってる俺に心配そうに声をかけてくれる。
「うー・・」
「おはよう?」
その言葉で俺はがばっっ、と正に音を立てて起き上がる。
心臓に悪いよ。毎朝目の前に総代の顔じゃあ・・・(^^;;)
半月経つってのに、毎朝これだ(--;)
「起きたね?顔を洗っておいで」
にこやかな笑顔で言われて、反論の仕様がない。
まだ7:00・・・もう少し寝てたいんだけどなあ・・俺。
「五分で支度しろ。白取」
毎朝毎朝、御苦労なことで―――浅野先輩―――
どうせなら止めてよ、こんなことさせるの。
泪=フィネス第36代生徒総代は、1/4だけ日本人の血を持ってる、 金髪碧眼の学園1の美形・・だ。
何の因果で俺は毎朝この人に起こされなきゃ行けないんだろう。 低血圧なのに、俺・・・。
顔を洗って、着替えて。朝食を食べに食堂へ行く。
取り敢えずは、朝食をトレイに取って、席に座り。俺はようやく意を決して話しかける
「総代―――」
「何だい?由也」
しっかりと目の前に座ってにっこり微笑んでいる。
生徒どころか先生まで悩殺なさる、という微笑みである。
ちょっと・・・ぐらっとくる。うう・・・負けらんない。 今日こそははっきり言わないと・・。
「あの、俺一人で起きれますから・・。毎朝お手数かけることは・・その・・・」
「低血圧の癖に、何を言う。寮長が朝寝坊では困るよ?」
「た・・確かにそうですが・・・」
「白取―――」
き、来たかっ。
呼ばれて恐る恐る総代の隣へ 目をむければ、やっぱり浅野先輩が睨んでる。
『反論する気か』って、無言で圧力かけてる。
うう・・。シンパのあんたとはちがうんだぞーっ!
そりゃ、泪先輩は綺麗だし、頭もいいし、性格も温厚で尊敬してるけど・・ これは違うでしょう!?
俺と浅野先輩の睨み合いに動じた様子もなく泪先輩―――
「私が好きでしているんだが・・そんなに嫌かい?ハニー」
・・・・・・一瞬、真っ白になった。
「・・?」
「泪・・・・・」
はっ!!泪先輩・・・全然俺らの固まった理由、分かってなさそう。
も、もしかして・・・その呼び方、本気??
「総代・・その、呼び方・・・その、本気・で?」
「私はいつでも本気だよ?ハ・・」
『それはやめてくださいっ』
浅野先輩と声をそろえて叫んでしまった。
「そうか・・気に入らないか」
「え、ええ・・・」
頭抱えちゃうよ?もう・・。本気?泪先輩やめてよ。
そりゃ一昔前の洋画の恋人同士かなんかで・・・・・
「では、マイボーイというのは・・」
泪先輩は至ってまじめな顔で、にこにこしている。
「・・・俺、学校行きます」
でも、からかわれてるとしか思えないよーっ。に、逃げよう!
「由也?」
「お先します!」
有無を言わさず飛び出す。逃げるが勝ちだ。
「おっはよー♪白取」
逃げるように登校中、後ろから声をかけられる。
相変わらず元気。生徒会書記・西藤智隼。友人というか悪友の一人。
「おはよ、西藤」
「泪先輩に起こしてもらったの?今朝も〜♪」
嬉々としてこの野郎はっ!
「何考えてんだか。いい迷惑だよっもう」
「今や白虎寮名物だもんね」
「・・・・・何が?」
お前、人事だと思って、楽しんでんな!?
「先輩と白取にきまってるじゃ・・・」
「何でっ!?」
声が殺気を帯びてきて西藤が後ずさりをする。
「・・え・・だってさ、36期1の美人学年TOPの総代の恋人っ・・ わっ白取!?」
知らず、西藤に詰め寄ってる。
「だ・れ・が・恋・人・だ!?」
「うわーん、だって皆言ってるじゃないか――っ」
「茶化すお前が悪い!大人しく怒りの鉄拳を受けろっ!」
「やだーっ!」
絶対噂の出所、問い詰めてやる!
「朝から、元気だなおまえ達」
と、その矢先に制止の声がかけられちまった。
「安東っ助けて!」
西藤がするりと逃げて安東の後ろに隠れる。
こっ、こいつは――ッ俺が安東に手が出せないの知ってて――っ
あ!あっかんぺーなんかしやがって!後で覚えてろよっ(むかっ)
「噂になってるの位、分かってるだろう?嫌なら自分で解決しな、白取」
「そうだよね♪」
西藤〜。お前ホント火に油を注ぐというか・・・
「お前も、いい加減茶化すのはやめな。智隼」
安東が頭一つ分近く違う智隼の頭を小突く。智隼も肩を竦めて舌を出す。
まるっきし兄弟だな、お前等は・・・。思わず脱力するぞ俺
がっ、しかし!やっぱりむかむかしてるぞ!俺は
「名物って言うなら、お前等もだろ?一原と竜崎と四つ巴。青竜の」
「俺が?」
と、至ってクールに安東。
「えっ!?俺も入ってんの―――?」
びっくりした様子の西藤。
「そうだよ」
お互い様じゃないかよ?
「俺は別に噂なんて関係ないからな。一原や竜崎の親衛隊なんぞ平気だ」
うっ・・・言い切ったな!確かだけどな。お前の方が人気は上だし。
「浅野先輩以下、泪先輩親衛隊は・・・コワイぜ?」
「わ、判ってるよ」
「それは良いことだ」
にっこりと安東は笑って下さる(^^;;;
37期TOPのお前に喧嘩売った俺が馬鹿でした。
さすがに、次期総代。
「噂だけどね、白取」
「何?」
西藤が思い出したように言い出す。良い予感・・・しないなあ。
「新聞部がトトカルチョ組んでるって」
「何・・・の?」
「美貌の総代が美人寮長を落とせるか・・・って」
「新聞部に殴り込んでやるーっ」
俺は2人を置いて走り出した。
「智隼―――」
呆れたように安東が呼ぶ。
「つい・・・口が滑った」
呆然と後ろ姿を見送ったまま答える。
「つい、じゃないだろう。白取が短気なのはわかってるだろう?」
「判ってる、フォローはしてくるよ」
安東に荷物を預けて、新聞部の部室を目指して走り出す。
「まあ、上手くやるとは思うが・・・」
こっそりと意外と心配性な次期総代であった。