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そして朝が来る

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「おはよう、由也。今日は早いね」
今朝、泪先輩に起こされる前に食堂へ来た俺に、いつものようににっこりと 微笑んで先輩は言う。騙されないからな。
「おはようございます」
声がぶっきらぼうなのが、自分でも分かる。
「ご覧の通り、俺は一人で置きれますから、ご心配なく」
「由也・・・?」
「じゃ、失礼します。朝練がありますから」
礼をして、後ろも見ないで食堂を出る。未練なんて、見せるもんか。

寮の入り口に加納に付き添われて、西藤がいた。
「西藤、大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃないのは、白取のほうじゃ、ないの?」
いささか不機嫌な俺の声にも動じた様子も無い。
「何で?」
「僕のせいでしょ?機嫌悪いの。昨日の僕と先輩の話、聞いたから」
「何のこと?」
睨み合いになる。まだ熱があるのが判るくらい、瞳が赤い。
なのに、俺をじっと睨み付ける視線は、凄く強い。
「お前、まだ熱あるだろ。無理しないで寝てろよ」
視線を外したのは、俺の方だ。
「白取!」
「加納も、病人に無理させんなよ」
今はまだ、お前の顔見れないや。

「智隼!」
泪先輩が走ってくる。
「まだ熱が下がってないから、無理をしちゃいけないと言ったろう?」
「僕のことは、良いんです。先輩」
西藤の視線は、ずっと俺に向けられたままだ。
「じゃ、俺は行きますから。加納、後頼むな」
仲良くしてればいいじゃないか。勝手に。俺に構わずに・・
俺には、立ち直る時間をくれよ。



「昨日、何かあったか?」
「なんだよ、いきなり」
体育の授業中。安東がいきなり切り出してきた。
隣のクラスの安東とは、芸術選択が違うので、体育だけが一緒だ。
(芸術選択は安東が音楽、俺は書道だ)
今朝の食堂での会話って、もう噂になって知ってるのかな安東。
どんな風に伝わってんのか知らないけど・・・。
「すごく、目つきが悪い」
「放っとけ。昔っからだ」
「早呑み込みで、頭に血が上ってるんじゃないだろうな?」
半分図星を指されて、焦る。でも、早呑み込みじゃあないと思う。
泪先輩と西藤が親しいなんて、誰も知らないだろう?
だけど、心配してくれてんだな・・安東。
「お前には、だからかなわないよな・・・」
ちょっと声が弱気になってる。
「伊達に4年もつきあってないからな」
「4年のつきあいといえば、西藤の瞳って薄茶色なのに始めて気が付いたんだよ 夕べ。知ってたか?安東・・」
言いながら、嫌なことまで思い出した――――。
「そこら辺に何かある訳、か」
「え・・・・?」
「こっちのこと。ああ、試合だな」
じゃあな、と安東はコートに入っていった。
お前も自分の親友のこと、心配だよな?
何だか、もう。色々考えるのが面倒になってきた。
俺は、とにかく、暫くは先輩のことも西藤のことも考えるのを止める事にした。



「話があるんだ。白取」
泪先輩を避けて一週間目の朝。やっと全快したらしい西藤が白虎寮の前にいた。
(ちなみに西藤はあの日、安東が迎えに来て青竜寮の自室に戻っていった)
「・・先輩のことなら、いいよ」
「よくない。安東たちにも、心配かけてるから」
「俺のことはいいから、仲良くやれば?」
言葉にもろ刺があるのを、言ってしまってから後悔する。
西藤が傷ついたんじゃないかと思って、振り返る。
「ごめん、西藤!」
お前のせいじゃ、ないよな。俺自分が悪い。
「いいよ。僕が先に白取を傷つけただろう?」
いつもにこにこしてる西藤には珍しい、無表情な顔をしてる。

「・・・・・・」
「正直になれよ。僕があの日先輩に呼ばれたのって、半分は白取のためなんだよ」
「何で?」
「白取に、嫌われてるのかって、凄く気にしてた」
「先輩が?」
「うん、あの人あんなに大雑把に見えて、意外と臆病だよそういうとこ」
だから、何でそんなに知ってる訳?そんな、親しかった?
「・・・ごめん、また誤解させるようなこと言ってる」
「別に、関係ないから・・・」
俺、そんなにモロ顔に出るんだろうか?
ああ、意外に冷静だな、俺――――。
「どうして?先輩のこと嫌いなのか?」
「尊敬してるよ。俺達の総代様、だからな」
「それだけ?」
何を言わせたいんだ?お前は!段々、腹が立ってきた。
「加納が、先輩と白取、朝は凄く楽しそうだって、幸せそうだって言ってた」
「誰が!?」
「正直になってよ。僕にじゃなくて、先輩と自分自身には」
「俺のことなんて、放っといてくれよ!先輩なんか大嫌いだ!!」

運が悪い時、という時はあるもので、そこに泪先輩がひょっこりと顔を出した。
「先ぱ・・・」
「・・・・すまなかった。そんなに嫌われているとは、知らなかったよ。 口論が聞こえなんで、来てみたんだが・・・」
落胆が、目に見えて判る。
「先輩、違います!白取は・・・・」
「嫌いだよっ!!」
もう、どうにでもなれ。壊れるなら、壊れちまえばいいんだ。
「何でも、思い通りになんかならないんだからな!俺のことなんて、 放っておいてくれよ!放っておいてくれれば・・・・」
くれれば・・・・の後は言わなかった。言えなかった。プライドがあった。
傷つかなくて済んだのに。こんなに好きにならなくて済んだのに、って・・ 口が裂けても言うもんか。
悔しいから。俺だけ、こんなに好きになっていて・・・・。
言えないから、先輩を睨み付けた。
泪先輩は、困ったように少し笑って走り去った。

「先輩!・・・白取!」
西藤が困ったようにおろおろしてる。
俺はそっぽを向いて、知らない振りをする。
「馬鹿!どうして!?好きなんだろ?なのに!!」
「放っといてくれ!お前の顔も見たくないんだから!!」
何とかしようと思ってきてた筈の西藤も、パニックを起こしている。
「もう、知らない!そんなこと言うの、らしくない!そんなこと言ってると 本当に先輩のこととっちゃうよ?いいの!?」
「勝手にしろっ!!」
もう何も聞きたくない。
俺は西藤を置いて、寮へ走って戻る。



「何で、こんなになっちゃうのさ・・・・」
一人残された智隼は、自分を責めつつぼろぼろ泣いていた。
白虎寮の門の横・・。そろそろ門限近い時間。
戻らないルームメイトを迎えに安東が来るまで――――。


 <その3そして朝が来る> その5

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